ジョン・ミューア・トレイル 歩き終えた後の感想

シエラの自然はダイナミックだった。でも一番印象に残ったのは自然ではなく、ハイカーの文化だった。老若男女、色んなハイカーがいた。カップルで歩くハイカー、熟年の夫婦、中年の友人同士、ソロのおじいさんなど。こんなに多彩な人たちが、ただ歩くという行為をそれぞれのスタイルで楽しんいる事に驚いた。

「それじゃ、気をつけて」 日本で山を歩いていて、会話した後にはこんな風に別れる。「気をつけて」はよく使われる言葉だ。山でなくても、友人と別れる際には挨拶としてごく普通に使う。相手を気遣うやさしい言葉。

「気をつけて」の代わりにトレイルで頻繁に使われるのが「Enjoy !」「Have fun !」だ。少しでも立ち話をすれば、別れる時には必ずこの言葉が出てくる。最初はとても不思議だった。楽しむなんて行為は、わざわざ心がけるほどのものではない思っていた。

でもそれは違った。出会ったハイカーたちの楽しみ方はすごく魅力的だった。全力で楽しんでいた。楽しもうという意思の強さを感じる。

旅を楽しむという事には小さな罪悪感がつきまとう。生産的な行為ではないし、ましてや仕事なんかではない。仕事だと「仕方ないね、大変だね」という雰囲気になるが、楽しむためだと「奥さん、よく許してくれたね」という雰囲気になる。人は「仕方ない」という言葉には弱い。でもそれはもったいないことだ。

今回、純粋に自分が楽しむ目的だけのためにこれだけの時間やお金を使うには、それなりの努力も必要だった。でも、きっかけは妻が作ってくれた。我が家のトイレの壁にはジョン・ミューア・トレイルの写真が貼ってある。雑誌の付録か何かだったと思う。最初にJMTの話をした時に、じゃあ、その希望が叶うようにと妻が貼ってくれたものだ。毎日用を足しながらその写真を眺めていたら、少しづつ準備せずにはいられなかった。するといつの間にかチャンスが訪れていた。

おかげで最高の時間を過ごすことができた。妻には感謝。ありがとう。本当に行ってよかった。

おわり

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